【批評祭遅刻作品】自分の体臭で書かれた詩/るるりら
 
道を歩くと つい最近まで、卯の花や すいかづらの匂いがしていたけれど、季節は進み 香の蒸散するスピードも早くなり、このごろでは すっかり緑の陰ばかり探してしまいます。神社の石段下っていると 眼下に鳥居が見えました。なにげに 鳥居のほうに 手をかざすと わたしの手首には 広島市があるなあと たわいもなく 思いました。静脈が広島の川にみえたのです。静脈と腱に囲まれたデルタのような部位は、現在では名前ごと 融けてしまった 中島町だなあと。

そして、身体に怪我がなくても 自らの血の匂いのことを 知っていることを 思いました。1945年のあの日から廣島はヒロシマになりました。ヒロシマでは、それはそれ
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