ひとつ 透る/木立 悟
雨の朝 鳥の声
傘を持つ手 昇る色
影の奥を
巡る色
水に呼ばれ
振り返り 見つめる
風の上をすぎる風
こすれては撒く光
お という声に
動く紙の森
遠まわりの日
曲がり角は湿る
籠のなかを
出ては入る蝶
凍りかけた花
空に溶ける
倒れ倒れて
土から見上げる
そこにはない胸に頬をあて
涙を聴く 涙を聴く
こがねが残る通り
夜はくすぐる
菓子に降る応え
二重底の永遠
幸福が見捨てた場所に幸福は在り
静かに水を飲みつづけている
舟が出る 船が出る
あとには誰も残らない
透明は
ゆっくりと移る
粉の光のなか
止まる雨のなか
青の花ふりやみ
風 流れ込む
あふれあふれ 行方を描く
水が水でなくなる遠くまで
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