饗宴のひと/恋月 ぴの
出棺を待つ君は安らかな表情で
首筋にあるべき索状痕は目立たぬよう化粧を施され
凄惨な最期を遂げたようには見えなかった
呼びかければ目を覚ますのではとか
冗談が過ぎたかな
頭を掻きながら棺から起き出してくる気もしたけど
かつて愛した男の死を認めたくない
ただ、それだけのことなのかも知れなくて
※
たぶん君がそうしたように寝室の扉へ上体を預け
揃えた足を前に放り出してみる
頭上には鈍い輝きを放つ金属製の塊
確かに人生の終りを告げるベルの類に見えなくもない
わたしでも手を伸ばせば指先は生死の岐路に触れることができるのだから
運動神経が良くてタッ
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