ぼくは/アンテ
「メリーゴーラウンド」 15
ぼくは
散髪屋さんなんて行きたくない
って拒絶していた自分がおかしい
喉にタオルを巻こうとして
気管切開のカニュレがあることに戸惑う店員に
いちいち説明をして
自分でタオルを巻いているあいだ
気まずそうに目をそむけている
店員が
夜 家族や友達に
おもしろおかしく話す姿が
頭のなかでちらついて
それだけで息が苦しくなって
どうせ そんな所だから
って決めつけていた
おとうさんの車は
海沿いの国道をひた走る
初めて間近に海を見たのも
この海岸だったそうだ
そもそも他の海に行っ
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