こころのフーテン/nonya
 

高層ビル群の彼方に
鮮やかな青と緑を
見ようとしてしまう旅

虫食いだらけの想い出を
あまりにも流暢に
語ろうとしてしまう旅

すれ違いざまに香った懐かしさに
誰かの後姿を
追いかけようとしてしまう旅

果たせそうもない約束のために
膨大な言訳を
用意しようとしてしまう旅

何の挨拶もなく旅立ってしまう
こころのフーテンに
追いつこうとして
全角ひらがなを変換キーでたぶらかす

何の前触れもなく帰ってきてしまう
こころのフーテンを
出迎えようとして
喩を捏ね繰り回しながら韻を踏んづける



戻る   Point(15)