杭と碑/長押 新
すっかり衰弱したわたしも口を開かない。
開かないにしろ、本当に大事な時に、女に言葉は必要がなかった。
わたしの体から湿った杭が抜かれ、その代わりにあなたたちの骨が、わたしの胸に刺される。
体が持ち上がる。
捨てられた杭の行方を、鼻で追う。
厳しい罰を受けていたのか。
母の匂いのする杭は古く、憎悪のようにつらい、と転がっていく。
その代わりに体を、剥がした。
まだ墓ではない。
あなたたちが、わたしの手をひく。
その手には指がない。
わたしの胸に、あなたたちの、その指の、その骨が刺されている。
鼓動に合わせて、ぴくりぴくり動いている。
まだ墓ではない。
数年経っても、あなたたちの指は生えてこない。
胸に開いた穴からは景色が見えていた。
骨を土に植えてやる。
やがて子供が生えてくる。
骨はもともと死を考えてはいない。
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