ナイロン弦のギター/オトナ/フミタケ
ずっと昔に飽きてやめたことを子供たちは世界で初めて
気付いたのは自分だ/というように夢中になってあそぶ
昔見たことのあるおなじ光景/おなじ顔/おなじ台詞を
そこに描き出す/僕も君も他のオトナ達とおなじように
夢中になって繰り返してく/何世紀も前から人類がしてきた
おなじ歴史を/まるで誰1人しなかったことをしている体で
僕は大人に見せる子供でなく子供に見せられるオトナなので
幼い頃は、家族のラジカセが左耳ばかりを酷使するのです
十代の頃、ステレオミニコンポはいつも高さがずれていて
おくゆきがたりない貰い物の大きなステレオスピーカーを
おなじ高さに据えたアパートで大人になろうとしたのです
自分で買うのは鉄弦のギターばかりだったけど/部屋には
ナイロン弦のギターが数本いつでも弾けるところにあって
それらに手を伸ばすときにはいつも彼らの顔を思い出して
意識もせずにお互いを守りツキを呼び込んでくれるきみが
もたらしてくれたもののひとつすぎない/身近に佇むぼくの
ナイロン弦のギター
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