ラブレス/DNA
 

冷めたコーヒーの色は暗く
この冬はあまりに邪気のない唇だった
木製の扉もすっかり
擦り減って きみの
背丈よりも長かった その
腕はいまも息づいている 

「それはおれたちが
 気にかけるなにか

熱いシャワーを首筋にあてがい
肌と肌を重ね合わせてもなお
零れ落ちる 汗は
どうとなることもなく 

「それはおれたちが
 失ったなにか

薄いスープでからだを暖め
ほどけていった唾液のゆくえを

(2010.2.20.

T.N. きみの好きだった
あの 谷へ
向かおう

イチノタニ。ビアンキ。キス・オブ・ローズ。

留まることなく    
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