虹のない/あるせいかつ/コーリャ
 
彼は言った
「海は干上がってしまう
鼻先から水を噴出して
海水を絶えず補充しなければ
流れ出る滝のおかげで
海は干上がってしまう」
そして
果てまで行き着き
世界から落下する旅人は
今まで見たどれよりも
はるかに大きな虹を
最後の地平に発見する

すこしだけ世界が揺らいでるのを感じるときがある
それはべつに地震がどうとかいう話ではなく
ただほんのすこしだけ
世界が不確かになっていくと感じるときがある
たくさんの風船がいっせいに空に放たれるときとか
夜の公園でひとりでにブランコが揺れるときとか
急行列車が駅をすりぬけていくときとか
花火大会の帰りとか


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