虹のない/あるせいかつ/コーリャ
彼は言った
「海は干上がってしまう
鼻先から水を噴出して
海水を絶えず補充しなければ
流れ出る滝のおかげで
海は干上がってしまう」
そして
果てまで行き着き
世界から落下する旅人は
今まで見たどれよりも
はるかに大きな虹を
最後の地平に発見する
すこしだけ世界が揺らいでるのを感じるときがある
それはべつに地震がどうとかいう話ではなく
ただほんのすこしだけ
世界が不確かになっていくと感じるときがある
たくさんの風船がいっせいに空に放たれるときとか
夜の公園でひとりでにブランコが揺れるときとか
急行列車が駅をすりぬけていくときとか
花火大会の帰りとか
す
[次のページ]
戻る 編 削 Point(17)