馬鹿と呼ばれて/草野春心
 


  馬鹿と呼ばれて
  夫は酒瓶を叩きつけ
  妻はヒステリックに叫んだ



  馬鹿と呼ばれて
  有名人は会見を開き
  一般人は参考書を買いに走った



  馬鹿と呼ばれて
  小説家はそれを書きつけ
  詩人はそれを訳した



  今日もまた
  馬鹿と呼ばれて
  ぼくはきょろきょろと辺りを見回し
  きみを抱き寄せた



  きみは
  笑っていた
  くすくすと
  世界に
  馬鹿と呼ばれて



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