空白にかえる/ズー
 
いわ」と
言うだけになり
ぼくらもいつの間にか
話題にしなくなっていた

「イエスさま、
あの子をみたことが
ありますか?
ぼくはあるんだ
ぼくの涙を想像している
夢のなかで、あの子の
髪は一本残らず、ぼくの
涙でぬれて、飴細工を
束ねる、あの子は
スキップをしながら
青い空に吸い込まれて
いく夢をみる日があって
やっぱり、ぼくはあなた
のゆびをすべて入れて
ほしくなる朝があるんだ」
教会にいく日曜日に
父さんからくすねて
おいた煙草に火をつけた
けむりがしみる、瞼を
とじると、裏側に
引っついていた一文字が
天使のことばが
空白にかえっていた
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