サマー・ヴァケイション/DNA
今朝がた夏を刻み終えた男の全身を漂白してベランダに干したところだと云う
熟すことも腐ることもなく ただ 秋がくればカサカサと鳴るだろう
できることなら、血の匂いのしない図鑑をくれ 魚鱗を貼付けたせいで
この夏を越せないなどというおまえの言い分がいまはつらい
*
滲む空からは一羽の鳥が降り注ぎ 白い腹をひらひら回転させ軋む
赤の、嘴だけが波の浅瀬で凍てついたまま刺さっている
*
熱を帯びた首筋から背中にかけて巨大な鴉に包容される夢をみた
薄く明るい光で照らされた巨大な鴉の羽毛でわたしの夏の休息は完全に露になってしまった
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