空と風船/草野春心
 


  身構えないで
  かなしみは空のように
  僕たちとともにある
  あるときは透明に
  あるときは責めるように



  手放さないで
  よろこびは風船のように
  気をぬけば飛んでゆく
  いつか萎んでしまっても
  ぜったいに放しちゃ駄目だよ



  新聞のかたすみや
  川のむこうで起こっている
  大きなことや小さなできごと
  僕らはみんな知っている
  それでも
  笑むことだけは絶やさないで



  夕暮れどき
  ひとびとの歌声が
  それぞれの方向に浮かんでいる
  名づけないで
  奪わないで
  よろこびもかなしみも
  すべてが僕らの歌なんだ




戻る   Point(2)