返り咲きの幻想/c
 

余生を愉しむ老人を
嗤う蠅がぐるぐると
周りを旋回し始める
し!しっ!死ィ!

彼らはセイメイ意地装置なんかを使って
きっとしぶとく生き続けるのでしょう
代わりにワカモノを差しだしたいのでしょうけれど
くしゃくしゃの顔から感情がみえない
((おばあさんはくしゃくしゃの表情を
   どうやっても変えない  ))

老人たちの午後は跡も咲もなく
とんとんと毎日繰り返され
涙を流しながら庭のトマトの心配ばかりしている
トマトはおばあさんよりも元気に
アオ臭い匂いでいっぱいの実をつけていた

おかしな時間だった
わたしは喜んで彼らの威厳を守ってあげますよ
生産性のない病室だった
血液はぐるぐる蠅のように旋回して
無機質な白だった
血はトマトの赤だったかしら?

蠅をぴしゃりと素手で潰した
(あまりにも嗤い声が耳触りで
黒ずんだ血が流れていました
おばあさんには
それから
会っていない


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