第二ボタンのひと/恋月 ぴの
 

夏休みに帰ってくると約束してたのに帰ってはこなかった

東京の暮らしは刺激に満ちているだろうしね

わたしなりには覚悟きめてはいたけど

あれから何年経ったのだろう

名前は一緒かなとは思ったものの
同級生が教えてくれた
まさに余計なお世話ってやつなんだよね

いまでも君のことだとは信じられない
東京へ出て行って
半年もしないうちにわたしのことを忘れてしまった男の子が

滞在していたホテルのドアノブで
そんなんでも自らの命を絶てるなんてね

テニス部の部長さんじゃなかったっけ

引き出しに見つけた第二ボタン
口に含むと後追いの青錆び臭さが舌を刺す









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