第二ボタンのひと/恋月 ぴの
 
べつだん躊躇ったりすることもなく
無造作に引きちぎった胸元のボタンを手渡してくれた

「ありがとう」

「礼なんていらないよ
こうするものらしいしさ」

恥じらいをみせれくれれば可愛いのに

でも、それは君らしくもあり

ひとまわりは確実に離れてる女のあしらい方と考えているのか

母親でもないし
お姉さんでもないしね

そのくせ、わたしの前を歩かないところが甘えんぼさんの所以だった

合格した東京の大学へ進学するとのことで
わたしにそれを止める確かな理由なんてあるわけもなく

懐かしい文通だったのかな

いずれ疎遠になっていくことは覚悟してたけど

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