蛍は消えた/竜門勇気
僕はいつも下手くそだった
なにをやっても下手くそだった
上手くいかなかった
周りよりもずっと
昨晩おじさんが死んだ
僕の好きなおじさんだった
昨晩もう峠だって聞いた
明日見舞いに行こうと思ってた
一昨年じいちゃんが死んだ
タコ足配線みたいになっちまった手を
握り返す手を
解いて別れてそれっきりだった
ひちがつの一日に
じいちゃんが死んだ
ひちがつの四日に
おじさんが死んだ
僕は下手くそばかりで
蛙はわんわん
鳴り止まない
あの日捕まえた蛍を
見せに行けばよかった
そしたらどうなっただろう
糞の役にも立たない涙が
あのせせらぎに立てかけられてる
あの日思ったことを
喋ってたらどうなったろう
あんたながくねーらしいけど、俺はそんなのは嫌だ
糞の役にも立たない涙が
あんたながくねーらしいけど、俺はそんなのみとめねーよ
糞の役にも立たない涙が
糞の役にも立たねー涙が
僕の中で涌いて消えていく
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