自分の命/mizunomadoka
いた私は
そのことを知らなかった
7月に帰国して、警察から山の捜索のことなどを聞かされた
通帳もなにもかも置いたまま
父はいなくなって
みつからなかった
何枚か写真がなくなってたこと
牛の子供を買うつもりだったらしいこと
私が養子で父にも親戚がなかったこと
せめて
事故じゃなければいいと思った
ちゃんと自分で選んだことなら
父さんらしいから
どこかで無事で
ひょっこり帰ってきて
「どうした?」って言ってくれたら
失踪届を出した帰りに
私は公園のベンチに座って泣いた
私には自分の命がわからなかった
一人きりになって
さみしかった
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