悲しい夢/ミツバチ
 
ちりんちりんと風鈴が揺れる
見上げる空は雲が多くて
うとうとと眠る肌に
風が静かに滑っていく

夢の入口で
君がさよならと言った気がした
強い陽射しの中で
弾むように雨は降り
君を追いかけて
私の白い足は
濡れたアスファルトを踏みしめる

人びとの涙に濡れていた
迷子になった子供のように
君の名前を呼ぶ声は
遠くに架かる虹に消える
片目を閉じた人々が
私を横目に見ながら
皆水溜まりに溶けていき
一人残った私は
君の姿を空に映した


ちりんちりんと風鈴が揺れる
見上げる空は相変わらず雲が多い
静かに滑る風は
悲しい夢から覚めた私を
優しい笑顔で覗き込む
君の髪を揺らしていた


戻る   Point(5)