廊下は走らない/るい
 

窓からの容赦ない日差しを受けて
何年か前を思い出したよ


あの頃はとにかく走っていた
長い廊下を全速力で
階段をひとつ飛ばしふたつ飛ばしで駆け上がって
いつも難しいことを考えて
わからなくて


「廊下は走らない」
張り紙は黄色くなって
少し破けていた


もうわたしはあの制服を着ることは無い
狭くて汚い教室にはいないし、
黒板とチョークの子守唄も無い
あんな風に走ったりしない

そのかわりに
お酒は飲めるし煙草も吸えるよ
愛想笑いも嘘も覚えたよ
大人の綺麗と汚いを知ったよ
責任が生まれたよ





きっと私はあの黄ばんだ
少し破れた張り紙だ

古くなっていく自分を
誰か見てくれないかと
ただじっと毎日を耐え
そこにあるだけ


でも悪くはないよ。



肌を刺す太陽
もうすぐ夏休み。



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