シー/長押 新
神の手が、空の光りをも覆い隠す神の手が、日本の空を隠した時には誰も気がつかず、あるいは日本人特有の気質のためか、誰も神の手を口にしないうちに、その手は日本を越え、ひとつの海に浸し、海面を撫でるように、海底を撫でるように、神は、自らの全知全能に、再び御目覚めになられたのです。今になれば、誰一人として神の手を見たことがないですから、神の手に気がつかないのは仕方ありませんが、その頃にはアメリカやロシア、イギリスの紳士、また彼らの産まれたばかりの子供でさえ、神の手をずっとよく知っていました。
神が海から全知全能を思い出した時に、海から全知全能が消えました。いいえ、何も神の手が奪い去ったのではなく、海はすっかり全てを産み落としてしまったのです。神はこれを、手を叩いて喜びました。このように、海が、生み落とした生命が美しかったためです。神が両手を叩かれたのと同じに、幾人かの子供が産まれました。
はたして、神の手がお造りになられたのでしょうか。縋るような瞳を持つ、口のない子供はみな、この時の子です。あれから、海が押しては引いて、動いています。
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