秋風/山人
梅雨の季節に君に遭い
雨の中の紫陽花に君をみた
幾重にも重ねた肺胞の中に
君はすべてを吸い取って
僕は君の吐息の中に埋もれた
暑い夏が来て
君の髪から砂粒がさらさら流れ
僕の耳に入り
しずんでゆくしずんでゆく
僕の肉の中にはらわたに
君の息が僕の首から突き抜けて
落ちてゆく君の吐いたしるし
海岸の
かもめの音が空をえぐり
単子葉植物の穂を揺らす
僕の体内の砂粒が
一粒一粒君を謎解いて
君を秋へと舞い上がらせる
一途なものを光らせた時の領域
吸い込んだ君の息
遠ざかる船の一抹の輝き
おもいは水平線に
秋風と共に吸い込まれていった
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