燐光/るるりら
 
自由だ
 鱗のような 光が わたしから 剥がれ
 蛍のように飛び
 放埓に人々の元に急ぐ
 わたしが放たれてゆく  
 
 わたしは 学んだ
 結局 私は貨幣とか呼ばれているようになった わたしとて
 わたしとて 人が恋しい

 わたしは、思い出す。
 わたしの体が緑青色に変化する刹那に
 燐光よ わたしの命よ
 わたしは 人が愛おしい
 
 謳歌しておくれ すべての命よ
 私の燐光よ
 わたしは錠の中では居られない
 
 触れられぬ人を永遠には抱けない 
 放埓な自由経済よ
 人のために 生きよ
 




西暦1977年 福澤諭吉の棺を開けたところ、
諭吉の棺は、その地下水に洗われるような状態に在り、
諭吉は、着物を着て帯びをしめたまま胸の上で手を重ねて仰向けに地下水に浸ったまま横たわっていた。地上に引き上げられると遺体は大気に触れることによって緑色に変わった。棺が
開封され 諭吉が火葬として改めて 荼毘に ふされた直後のことだ

あの バブル時期が到来するのは
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