初夏の神田の六つの詩/……とある蛙
1
朝九時にニコライ堂を右手に見
下りる坂の街路樹は
銀杏のくせに輝く緑
2
靖国通が
花満開だなんて
だれが信じるものだろうか
でも事実なのだから
3
湿気の多いビル街の中
連雀町の一隅が
タイムスリップした江戸の佇まい
蕎麦屋に鮟鱇、甘味処
みな木造
昔の落ち着き
(実際には明治なのだが)
4
橋と坂の多い町
相生 紅梅 男坂
昌平坂を登り切り
左に折れて御茶ノ水、
そこから望む聖橋
初夏の緑と陽光に
映える水面に大きな輪
5
明神下の色街は
今、芸者なぞいやしない。
しかし、元芸者のばぁさんが
若い衆二人に介護され
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