邪魔にならないところに放っておいてくれ/ホロウ・シカエルボク
る生物に生まれて来ちまった
嘆いて見せてもなにが変わるわけでもない
この身体はどこにも埋葬しないでほしい
勝手に灰になって消えてしまうまで邪魔にならないところに放っておいてくれ
たましいが自由になれるのなら
肉体もそうして欲しいと思うからさ
ガソリンの風が西側車線を走りぬけてゆく
きっとそのまま港から海へダイブするのだ
午前一時半の懸命なアクセルはそんな説得力を持っている
なのに誰もそれにただしい色をつけようとはしない
ヘッドライトが明るく進行方向だけを照らすから
それ以外の場所に潜んでいるもののことはなにも見えることはない
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