邪魔にならないところに放っておいてくれ/ホロウ・シカエルボク
のだけど
手をあげたという恥は簡単に消えたりはしないものだ
エアコンが静かに回転している
効果のない子守唄に聞こえる
寝床も風もなにもかもまとわりつくようで
時計だけがきちんと役割を果たしている
いつか少しの間していた仕事の中で
同じ相手に「出来ません」と説明し続けなければならないときがあった
たとえるならそんな光景によく似た今夜だ
居ない虫が身体を這い続ける感触が始まる
感覚的な存在にばかり脅かされている
上手く歩けなくなって溝に落ちた犬には子供がいた
長生きして痴呆になって死んだ
「あれはいつのことだった」と
言葉を付け足すことが多くなっ
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