明け方の女/はだいろ
 
ぼくの鼻毛が出ていると言ってくれるし、
ぼくの息がにんにく臭いと言ってくれるし、
ぼくの食べるのが早すぎると言ってくれるし、
でも、それでも、
ぼくの手をにぎってくれる。
ちょっと前までのぼくは、
なにかひとつの欠点があるために、
人は、
風をつついた小さな舟のように、
ずっと離れて行くものだとばかり思っていた。
でも、そうじゃない。
美少女には、もう会えないけれど
(お金を出せば、また会えるけれど、
それは、単なる、次の一回に過ぎない。)
彼女には、
何度も、何度も、会える。
人とゆうのは、
何度も、会うのが、いいんだ。


徹夜明けの仕事は、
トラブルつづきで、
かえって眠気も襲ってこなかった。
彼女とぼくとでは、
食べる事と、
セックスくらいしか、
共通の娯楽がないけれど、
(室井祐月が、たしかそんなこと言ってたな)
それで、
十分だという気がした。







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