坂の上のひと/恋月 ぴの
この坂道は君とともに上った坂道
ふたりして登坂の辛さにあえぎ
君の差し出した手のひらの熱さに驚きながらも
未来への扉が垣間見えたような気がして
したたる汗の交わる戸惑いと
きつく握り返してくる力強さに心躍らせた
ふたりに言葉なんていらなくて
忙しい息の甘酸っぱさだけが頼りだった
この坂道は君とともに上った坂道
あの頃とさして景色に移ろいはないはずなのに
気がつけば坂の上はすぐそこで
あまりのあっけなさに漏れる苦笑を隠しようもなく
ふたりして何を悩んでいたのか
今にして思えば、あれでも駆け落ちだったのか
永遠に辿り着けないのではと仰
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