白い花/yo-yo
 

小学校の卒業式の日、
担任の梶原先生が「白い花が咲いてた」という歌を歌ってくれた。
大きな顔をした恐い先生、歌の声は低くて優しかった。
ふだん怒ると顔が真っ赤になったけど、歌ってる顔も真っ赤だった。
先生、おげんきですか。

先生は黒板いっぱいに
「心に太陽を持て」とチョークで書いた。
クラスのみんなに贈る、それが最後の言葉だと言った。
国語の教科書に載っていた、詩人のだれかの詩のことばだった。
いつか太陽を持とう、
小さな心に、あの日はそう思ったものだ。

最後の日は、始まりの日でもあっただろう。
あれからたくさんの、最後の日と始まりの日を繰り返して、
今はどんな日なのかもわからない。
たぶん私はもう、あの頃の先生の年齢を過ぎている。
木造校舎の長い廊下をはしる、
工作ノリの匂いがする教室、
なぜか小さな白い花がいっぱい咲いている、
きみたち、いつのまに花になってしまったんだ、
と梶原先生の声がする。






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