肋骨/はるな
 
何度もおもいだす
何度も何度もくりかえし
手首のあたりにあるうすい火傷のあと
ささくれた働き者の指
左がわの耳たぶに指すピアス
くるぶしの刺青
うすい無精髭。

(わたしはむかしあなたの肋骨だったんだよ)
(ほんとに?)

笑い声

夏にはどんな汗をかくんだろう?
知らないから、思い出せない。

何度もおもいだす
何度も何度も思い出すけれど
だんだん日々に薄まって
努力しないともう思い出せない。
履いていた靴下の柄や下着の色を思い出せるけど
髪の毛の匂いや肌の温度や舌の味をもう思い出せない
雨の日にはどんな靴を履くんだろう?

あまり長くそばにいなくてよかった
思い出すことが増えてしまうまえに
だったら見会わなければよかった
いっそ
、たら、れば、
知りたくて
知ったのに?
そんなことを考えるほど
わたしがださくなる。
何度も思い出しては、
思い出が古くなる。



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