太平洋/藪木二郎
 

 西村先生
 書道担当の紅一点の女性教師は
 更に念入りに
 まず左脚
 胴を飲み込まれながら派手な悲鳴を上げ
 最後にあの
 大きくはないけど上品な胸を
 肋骨と一緒にバキバキッと
 そして
 血ブハッと吐いて

 でもそんな
 ヒロイン二人への残酷な仕打ちは
 余計なこってした
 高校時代の僕の世界に
 異性なんてもんは
 存在しちゃあいなかったんですから

 有限な人間のうちに
 神が永遠の観念を植えつけたように
 モテなかった僕のうちにも
 エロ本が性の観念を植えつけてましたが
 そんなもん
 形而上学です

 独り
 独り
 独り占めの太平洋でした
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