ブラジル担ぎ/たもつ
玄関の前にブラジルが落ちていた
おそらくブラジルから
何かに運ばれてきたのだろう
ブラジルに住んでいる人や他の生き物も
ブラジルが見つからなくて大変だろう、と思い
お役所に電話してみたけれど
親切に他のお役所を紹介してくれたり
担当者の不在を教えてくれるだけで
その優しさに心が温まって終わる
家族の者に相談しようとしても
住民票を紛失したかのように
誰も帰ってこない
宅配便で送ろうとして規格外だと断られる
飛行機に乗ってブラジルまで持って行くには
積みこめる大きさではないし
何より行き先のブラジルは今ここにある
やはり海に浮かべて
筏のようにして運ぶしかないのかもしれない
担ぎあげて海へと歩き始める
こんな時に限って昨日よりも暑い
流れる汗を拭いてくれる人にも会わない
そのくせオールをくれる人はたくさんいる
海はさほど遠くないはずなのに
むしろ好んで
逆方向に歩いている気さえしてくる
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