あ め/純情気質
雨の日はくぐもっている。
爪先だけ、ほの白く煙る雨に湿って、
傘の中ですこし、淋しいことを考えている。
あのひとのことばを
あのひとをきずつけるために使うわたしは
どんなにか残酷なのだろう
煙草を吸うおとこの背についていく。
うつむきかげんに 傘がゆれて、
雨の日のクルマのおと と
どこか遠くで 考えている。
夜、おとこに髪を洗わせる
水の流れこむ耳を
わたしはどこかあきらめている。
あのひとが
死んでしまったのなら良かったのに
と
私はまぶたを閉じて
くぐもる世界から ひきこもってしまう
おとこの指は やさしくわたしを奏でる
けれど雨の日はくぐもっている ので
わたしはせつなさから逃れて
あのひとの
知らぬ遠い景色を 見に行こうかなんて
うっとりとかんがえている
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