さくらぞめ/
亜樹
肩を震わせ、泣きながら笑った。僕も其れを真似る。
抉った穴に、二人で土を被せた。
暗く、硬く、もう誰も掘り返さないように。
僕等は墓穴を掘った。
桜は墓標だ。
葬られた僕等の思いの亡骸が、此の桜を染めればよいと僕は思った。
赤く、赤く。
そうすれば、誰かは知るだろう。
此の痛み。
此の悲しみ。
此の愛おしさ。
いつか。
いつか。
春の来る前に、沙名はお嫁に行った。
桜の咲く前に、僕は鉄の船に乗った。
あの桜が咲いたかどうかすら、僕は知らない。
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