あなたが生まれた時、あなたは泣いて、周りの人は笑っていたでしょう?/村上 和
こんな日はいつも雨が降っている
遺影で笑う人を
私はあまりよく知らない
よくある失敗談で
食べてしまうというお焼香
やり方は知っている
でも実践は小学生の時以来だ
少しどきどきしている
始点と終点を結ぶのが人生だ
と誰かが言った
終点というその言葉に
単線二車輌のレトロな電車と
忘れ去られた理由で使われなくなった
小さな駅のある風景を思い浮かべる
悲しいねと泣く友人に対し
さみしいねと笑って返した
彼女の眼が少し腫れている
お焼香の順番はまだ回ってこない
空が泣いているみたいだ
と言った見ず知らずの彼の声が
糸になって私と結ばれる
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