それっぽい一日/草野春心
 


  それっぽい朝に
  それっぽく目覚めた
  鏡に映るのはうんざりするほど
  それっぽい僕だ



  午前はそれっぽい本を読んだ
  正午に池袋へ出て
  君とデートをした
  街はそれっぽいカップルで溢れていたが
  僕たち自身はそれっぽいのか
  それともあれっぽいのか見当もつかず
  それっぽいホテルでそれっぽく寝た



  胸に去来するそれっぽい感情
  それっぽい学校を出て
  それっぽい仕事に就き
  ある者はそれっぽい幸福を
  ある者はそれっぽい不幸を
  それっぽく抱えてゆくのだろうか



  別れ際、君の手を離し
  改札の向こうへ見送るとき
  だれかに問われている気がする
  僕は
  僕たちは
  それっぽく生きてるだけなんじゃないかと



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