山道/草野春心
山道の途中
荒れた道の真ん中に
母が落ちていた
僕はそれをリュックに詰めた
川に至り
清水で口を漱いでいると
父が流れてきた
僕はそれをバケツに掬った
夜になると茂みが騒ぎ
暗がりに目を遣ると
弟が転がってきた
僕はそれをポケットに入れた
片時も眠らず
いったいどれだけ歩いたものか
思い出せない
木々の葉が擦れる音と
土の匂いを憶えている
山頂に辿り着くと
母と父と弟が
朝陽のもとに待っていた
似たような荷物を抱え
空よ、
山よ、
僕の歩いてきた道よ、
これが僕の家族です
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