おやすみ/電灯虫
 

CDから流れるアイドル音楽を聴きながら
左側の海の向こうに沈む夕陽に
センチメンタルに おやすみと言ってた。



初めて泣いた本を読み終わった。
本好きになるきっかけとなった出来事で
拡がる穴を埋めるように本に入ってた。
もったいなくて 読み終わりたくないまま
最後のページを開けば
また読む日まで 
おやすみと 本の表紙と一緒に閉じる。



ふっと目が覚めて
起きようか迷ってると
向こう側から漏れる
瞼を通ってくる光が遮られて
大きい手が頭を撫でる。
どっかに行ってた眠気が
羨ましがって飛んできたから
言われない おやすみに従って
眠っていく。



眠ってたのかどうかは
体に残る感触で確かめる。
おやすみの言葉が
そっと気持ちにかけられて
器の中で回る水のように
巡り巡るから
そこに生まれる力を爪先まで通して
おはよう と言う。

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