おやすみ/電灯虫
CDから流れるアイドル音楽を聴きながら
左側の海の向こうに沈む夕陽に
センチメンタルに おやすみと言ってた。
*
初めて泣いた本を読み終わった。
本好きになるきっかけとなった出来事で
拡がる穴を埋めるように本に入ってた。
もったいなくて 読み終わりたくないまま
最後のページを開けば
また読む日まで
おやすみと 本の表紙と一緒に閉じる。
*
ふっと目が覚めて
起きようか迷ってると
向こう側から漏れる
瞼を通ってくる光が遮られて
大きい手が頭を撫でる。
どっかに行ってた眠気が
羨ましがって飛んできたから
言われない おやすみに従って
眠っていく。
*
眠ってたのかどうかは
体に残る感触で確かめる。
おやすみの言葉が
そっと気持ちにかけられて
器の中で回る水のように
巡り巡るから
そこに生まれる力を爪先まで通して
おはよう と言う。
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