おままごと/草野春心
昔々、
真昼の公園で
だれよりも巧みに
おままごとをしてみせた
きみが主婦で
ぼくが会社員で
時は今、
少し違うのは
きみもぼくも働き
ほんとうに結婚したこと
ままごとのようにはいかず
濁流のなかで押しこむ茶碗飯は
あの頃、
戯れに口にした泥団子と
一体どちらが美味いのだろう
だが今も
きみの視線は未だ直線だ
向かいの席で
洗濯機のまえで
あの頃と
寸分違わぬ深みから
きみの視線は未だ直線だ
*
夜、暗がりで
きみが寝ているあいだに
きみの眼から
小さな笑い声が聴こえてくる
そっと目蓋をこじ開け
覗きこんでみるとそこでは
きみとぼくがままごとをしているのだ
永遠に
永遠のように
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