喋る/草野春心
 


  喋ると
  ひとつ減ってしまう
  幸せなものは謙虚に黙っている
  空の青さも
  木々の深みも



  動かすと
  その分だけこぼれてゆく
  私のなかの蝉は
  叫びながら落下してゆく



  それでも私は喋るとしよう
  あなたへ向けて



  あなたはいつまでも黙っていていい
  その笑みに
  心のかすかなざわめきに
  私が耳をすませばいい



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