ある5月の赤いマーク/なかがわひろか
 
君の手帳の5月のある日に
赤い小さなマークを見つける
素っ気なく見えても
ちゃんと気にかけていてくれた

君のスケジュール表は
僕とであってから毎日のように
予定が詰まっている
仕事の予定よりも優先された
それは僕との時間

時折書かれた悲しい言葉
それはきっと僕が投げかけた言葉
それでも次の日には
また1時から映画の予定

真っ黒に染められた君の手帳だったのに
来月の予定は真っ白で
だけど5月のその日だけには
赤い小さなマーク

僕は君の手帳に何を書こう
君が書いたように僕との予定を書こうにも
もう何も思いつかないから
君の手帳は真っ白なまま

5月のその日だけを残して

(「ある5月の赤いマーク」)

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