木魚屋/魚屋スイソ
食虫植物ズというノイズバンドでいつも弦の足りていないギターに傷を付けたり付けられたりしていた彼女が今日のライブ中に死んだ。おれは隣で彼女が書いた「子宮なんかいらない」という歌を叫びながらベースアンプに頭突きすることに夢中で全く気が付かなくて、曲が終わってもずっとギュキギュキ鳴るものがあったからまた弦が喉に刺さって抜けなくなったのかと彼女の方を見たら四フレット辺りを噛み締めたまま失神していた。右眼だけ真ッ白で綺麗でおれは自分の額から垂れた血が眼に入るまで痙攣する彼女のつるつるの眼球に魅入っていた。
十五人ほどの客がみんな引いた後、天井の低くてやたらでかい柱が邪魔な楽屋に戻って彼女を何度か揺さぶ
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