聖餐/
佐々宝砂
あのひとに
この虫たちを届けるために
胸までどろどろになって
融けてゆく
油膜になってしまう
それでも
ゆかねばならない
虫たちが励ましてくれる
逝け と 氏ね と
唇は泥に閉じられ
耳はノイズにふさがれ
ただ両の眼だけが光をとらえ
夜明けまでに
きっと氏ぬだろう
だから
氏ねと命ぜられて
氏者よ
おまえはどこに逝くか
(連作「中有の物語」より)
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