聖餐/佐々宝砂
 
あのひとに
この虫たちを届けるために
 
胸までどろどろになって
融けてゆく
油膜になってしまう
それでも
ゆかねばならない
虫たちが励ましてくれる
逝け と 氏ね と

唇は泥に閉じられ
耳はノイズにふさがれ
ただ両の眼だけが光をとらえ
夜明けまでに
きっと氏ぬだろう
だから



  氏ねと命ぜられて
  氏者よ
  おまえはどこに逝くか





(連作「中有の物語」より)
戻る   Point(2)