聖餐/佐々宝砂
氏ねと命ぜられて
氏者よ
おまえはどこに逝くか
輝く油膜を見つめている
四日頃の月が
黄砂にけむり
ここは沼のほとり
膝のうえにゆっくりおりてくる
天からの贈物は
青光る翅に紅を散らした甲虫
麝香の香り漂わせた黒蝶
薄青い肌に茶まだらのちいさな蛙
逃げようともしない
これら美しい彩りのいきものを
ささげもち
沼に足を踏み入れる
ぶくぶく泡立つ汚泥が
やわらかく冷たい指のように
足を撫であげるので
いくども転びそうになる
沼のむこう
しらじらと明るい
コンビニエンス・ストア
ゆかねばならない
あの
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