娘たちのパン/
佐々宝砂
もそも大地でない私が大地に
触れるとしても私は大地になりえない
逡巡する私は実は上空にいるのでなく地下にいるのかもしれないが
ともかく私は大地ではないのだ大地は彼女である
彼女はすんなりと細いが腕は筋肉質で頼もしい
その腕から指先からぽろぽろとパンがこぼれてゆくまるでむげんに
永久にこぼれてゆくかのようなそのパンがほしくて
あまりにもほしくて
私は大地に激突するだろうもうすぐ
(連作「中有の物語」より)
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