いただきます、ごちそうさま物語。/吉澤 未来
「いただきます。」
そういいながら私は箸を突き立て
食卓にのぼった魚の目の中をじっと見る。
魚はもちろん死んでいて、魚の目には
私がはっきり映っている。
果たして私は
私の中に死んだ魚を見つけたのか、
死んだ魚の中に私を見つけたのか、
一瞬わからなくなる。
いや、実は死んだ魚は食卓にある焼き魚として、
むしろ生き生きとして
死んだ私を見つけたのかも知れないと。
そうは思いながら、箸を動かし、
私は一つの死の中にある私を見つめて呟く。
「ごちそうさま」
私と魚のドラマは
1日のたった3分の1の中で消えていってしまった。
戻る 編 削 Point(2)