本当の自分/八男(はちおとこ)
 



本当の自分はどこに行ったのか

本当の自分はどこかでせかせかと
誰かの影になって畑仕事をしているのか

だから本当の自分は 
麦わら帽をかぶっているのだ

本当の自分の上に蟻が歩いているし
その下にはミミズが土を食べちらかしている

やがて夕焼けがきて
本当の自分は大きく大きくなって

大きな麦わら帽の影が
山を越え 海を越え
もっと大きくなって
月にもとどいて

嗚呼としか言いようがなく

ゴーンと
鐘の音のように
鳴り響いていく
戻る   Point(1)