私たち/電灯虫
 
に座っていてくれて
泣きそうな時は
両手で覆ってもらった。
寝てるときでも
枕下で寝るまで待ってくれた。
起きて朝ご飯を食べる時は
パンをかじって
その視線を交わして一日が始まった。


二人で夜の屋上で過ごした日。
雲間から月光が滲む中
前に座ったその背中を愛しく思った。
強い風が吹く中で
間を繋ぐ糸がはためいて
取れちゃいそうで
二人の絆を試していた。
取らずに残った糸を抱えて
いっぱい泣いた。
抱えた分だけ 
少しばかり後ずさりして
振り返って見つめてた。
何の混ざり気も無い
あのやり取りを忘れない。


今 継承を済ませて
彼女に繋がり
拙い動きで歩いている
その姿を見ている。
私との間には物理的な絆は
もう無い。
両手の指に残ってる
私だけの跡を握り締め
私は進まなきゃならないんだ。

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