空白から象形を独白する/北街かな
 
せせらぐ闇の絡まる音を 寝転びながら聴いていた
耳たぶを床にくっつけて
爪っ先で悪心を蹴っとばし
かかとで抑鬱を押しのけて

扉のすきまに吸い込まれてゆく

耳の中身が水深1000キロメートル底に沈んでいた
貝でつくられた船体を背に乗せて
手紙入りの瓶詰めをくわえて
魚たちに覗き見されながら
ぼんやりと独白して、外をみている

しろい光に幾度も頭を貫かれて気絶する

枕が布団に遭難しつづけ
私は青白さを剥き出しにしたまま
闇と朝の境目に斜めに晒されて、うごけない

何度も、何度も気絶と混濁をくりかえしていたつもりだった
部屋のなかはとっくに花びらで覆いつくさ
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