逃亡/マッドビースト
 
かったが
 見渡す限りはサバンナで
 振り返れば街の
 匂いくらいは嗅げたのかもしれないが
 やはり足は真っ白い地平に向いている

 もう長いこと手もついて進んでいて
 立っていたのは古い写真のような景色だけで
 これはこれで目の前の草の色の濃紺や
 花の蜜や虫の死骸で頭が一杯になるので
 悪いことではない

 それでもここでサバンナもきれる場所というのがあって
 その先は砂漠だった
 振り返ると少しまだ思い出せるものはあって
 どうしようかと思ったが
 誰かがの黒い革靴とブルージーンズが
 境界のあたりに脱ぎ捨ててあって
 これも悪いことではないのだなぁと分かった

 確か今日は金曜日なので
 日曜のよるには歩いて街に帰ろう
 もし立てなくなっていたら愛らしくして誰かに飼ってもらおう
 と思って僕もジーンズを脱いだ。  
  

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